御子柴泰子さん(会ってみてほしいごきんじょさん 第2回)

今回のごきんじょさん:御子柴泰子さん

中央町商店街で古本屋「半月舎」を営む。


 中央商店街の玄関口から二軒目。店内からどこか懐かしい雰囲気がこぼれる本屋さんがある。古本のお店、半月舎だ。木がベースの本棚と電球色の照明がゆったりとした空間をつくる店内では、名だたる文豪の作品集から地域の情報誌までたくさんの本が来訪者を囲んでくれる。「もう何冊あるのかわからなくなっちゃいました」。そう話す「舎員」の御子柴さんが今回のごきんじょさんだ。

 「社会科の教員免許を取りたくって…」。高校を卒業すると担任の先生の勧めで滋賀県立大学に進んだ。「学生時代は城下町を散歩してました」。新興住宅地で育ったため、昔のものが残っている彦根に惹かれるようになった。 「ここに丘があるのは昔お堀だったからなんだよ〜って、今は埋め立てられてなくなってしまった、外堀の歴史を教えてもらったことがあったんです。そういう背景を知って、何気ない景色が変わって見えるようになりました」。まちの歴史を教えてくれた人の存在があり、さらに彦根にハマっていったという。

 お店を持つきっかけは大学院時代に遡る。研究で昭和30〜40年頃の彦根の様子がわかる資料を探したが、図書館などで探しても見つからない。一方、古本をゴミに出している人をよく見かける。 「彦根に古本屋があればな〜って言っていたら、みんなから御子柴がやればいいじゃん。っていわれて。そのうちの一人と一緒に半月舎を立ち上げました」。ふたりとも本業を抱えながらの開業だったので、「月の半分くらい営業できれば」という思いから店名が決まった。

 「地元に帰るという選択肢はなかったですね」。町の歴史を紹介してくれる人、書店を立ち上げた仲間、地域誌を作っている人など「おもしろい人たち」との出会いが御子柴さんを彦根に定住させたという。

 「古本だけでなく、文化的な楽しみがある街にしたい」。そんな思いのもと、半月舎では定期的にイベントを開催している。本に関連するイベントだけでなく、ときには音楽ライブも企画する。「いろいろな人との半分をくっつけて一つになる」。いつしか半月舎という名前には、そんな意味も込められるようになった。イベントに訪れた人との縁が、次の企画につながっていく。きっと御子柴さんも誰かにとって「おもしろい人」になっているのだろう。(2019.5.1)

ごきんじょさん電子版

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